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Creator: 川﨑 キヨ
Summary:  ある日、亡くなった祖父宛てに1通の手紙が届いた。
 差出人はジェームズ・ウォーターさん。
 見知らぬアメリカ人だった。
 手紙の中でウォーターさんは、祖父が作ったブリキのおもちゃが大好きで、ぜひ会って話がしたい、と書いていた。
 それはほとんどがひらがなで、お世辞にも決してうまいとは言えない字だったが、なぜか親しみが感じられた。
 それに、アメリカ人が祖父がブリキのおもちゃを作っていたことを知っていて、しかもそれが好きだということが単純に嬉しかった。 
 生前小さな町工場を営んでいた祖父は、戦後数多くのブリキのおもちゃを作った。
 当初は幼い私にだけに作っていたが、その精巧さが評判となり、海を渡ってアメリカにも輸出された。
 しかし、約30年前に亡くなってからは、工場は閉鎖された。
 以来、私自身ブリキのおもちゃのことさえ、すっかり忘れていた。

 1週間後。
 ウォーターさんは孫のリックさんを通訳として、私の家に一緒にやって来た。
 そして、居間のテーブルの上に、持参したキャリーバッグから祖父の作ったたくさんのブリキのおもちゃを並べた。
「ウォーターさんは、どうして祖父のおもちゃを集めているのですか?」
 私の素朴な疑問に、ウォーターさんはドライバーでブリキの自動車を分解して、中の部分を見せてくれた。
 『平和』。
 そこには白い祖父の字で、はっきりとそう書かれていた……。
Price: ¥200

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