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Creator: 川﨑 キヨ
Summary:  やられた……。あの少年だ……。
 中央アフリカの某国の空港ロビーで、私は呆然と立ち尽くした。
 戦場カメラマンで世界中の危険な紛争地域を漂流していた私が、この地を訪れたのは仕事のためではなかった。親友でジャーナリストのケンがこの地で行方不明となり、その手掛かりを探すためだった。
 この国は長らく内戦が続いていたが停戦協定が結ばれ終結し、国連の監視下、新大統領も決まり、民主化を歩んでいるように見えたが、ケンはそれに疑問を抱き、この国にやってきたのだ。
 しかし到着口を抜けてロビーを歩いていたところ、よりによって地元の少年に大切なカメラを騙し取られてしまった。
「ハハハハハ、それは災難でしたね」
 迎えの車の中、ガイド役のジャンは他人事のように笑っていたが、その眼は鋭く、なぜか私を警戒しているようだった。
 翌日から、私はジャンと取材活動を行おうとしたところ、あちこちでジャンから「待った」がかかった。
 不信感を抱いた私は、ある夜、ホテルを抜け出して一人で歓楽街を歩き回り、ケンの手掛かりを探した。そして、そこで偶然あの少年と逢った。
 私は少年を捕まえて、スラム地にある彼の住居に行き、カメラを取り返した。
 少年の名前はヤオ。そして、その傍には妹のマリーがずっと寄り添っていた。
 マリーは父親の死のショックで口がきけず、父の形見の銃で造った人形を抱いていた。
 その後、2人の兄妹と心を通わせるようになった私は、ジャンの脅迫じみた忠告を無視し、彼らと行動を共にした。そして、この国の真実にカメラを向けて、無我夢中でシャッターを切った。
 それなのに……。

 私は生涯、2人の幼い兄妹を忘れることはないだろう……。
 
Price: ¥300

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