黒い黄金 LEVEL 7
1 month ago
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久美子が駐在として勤務する村には古い洋館がある。
今は住む人はいないが、こんな過疎地には似合わないほどのオシャレな建物だ。
なんでも昭和時代に成金が建てたらしい。
「わしがガキのころには、金が採れたんじゃよ、この村では」
歴史好きな茂吉じいさんが、教えてくれた。
「かの武田信玄公が、軍資金にした鉱脈があったんじゃ」
「へえ、じゃあ戦国時代ですね」
「そうじゃな。昭和になっても砂金が採れて、それで儲けた男が、この洋館を作ったということじゃ」
「どんな人だったんです、その成金は」
「わしも話でしか知らんが、たいそうな女好きだったそうじゃ」
「え?」
「若くて、男前で、信じられんほど、お金を持っとる。その金で次々女を口説いとったらしい」
「いかにもですね」
「ああ、まったくじゃ。若くても年増でも、美人でも醜女でも、百姓女でも、貴婦人でも、見境なかったそうじゃ」
「逆にすごいですね。でも、きっとトラブルもあったでしょう」
「むしろ厄介ごとしかなかった。でも有り余る金で解決した。それに、なんだか愛嬌もあって憎めない男だったともいう」
「面白そうな話ですね。それでどうなったんです?その男は。だいたい予想はつきますが」
「実は、よくわからんのじゃ」
「え?」
「東京に出て、没落したとか、女に刺されたとか、この洋館で座ったまま絶命したとか」
「そうなんですか」
「あ、久美子さん、いっとくが、この館に勝手に入ってはいかんぞ。特に居間の赤いイスには座ってはいかん」
「どうして?」
「呪いがあるとか、いわれとる」
「その成金男の?」
「そうじゃ、それに今でもその男がそこに住んどるかもしれん」
「まさか」
「まあ、冗談じゃがな」
久美子と老人が洋館を見上げる。
来年には、村の観光資源として改装してレストラン兼売店になるともいう。
この村の特産であるチョウザメを使った店だ。
チョウザメから取れるキャビアは「黒い黄金」とも呼ばれる。
久美子は実はキャビアより、チョウザメのお刺身が好きだ。
この話はフィクションです。
実在する個人、団体、地名とは無関係です。