水中庭園の泉
1 year ago
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えー、それでは絵画を志す若者の諸君に質問じゃ。
この世でもっとも美しいものはなんだと思う?
え、なに「愛」じゃと?ぐぬぬ、そのような本質的なこといわれては困るわい。話が進まん。
えー、他にはないか。ほう「自然」いいねそれ。確かに自然はたいそう美しい。他には?うん「人間」うんうん、そうこなくては。
そうじゃ、この世でもっとも美しいもののひとつが「人間」特に「女性」ということに異論はあるまい。
ではここでワシが推奨する美しい女性像をお見せしよう。
これじゃ。
ふふ、どうじゃな。男子生徒からは感嘆の声が出たようじゃ。
これは19世紀フランスのアングルという画家の代表作「泉」じゃ。
ご覧の通り一糸まとわぬ若い女性の全裸じゃ。まるで写真のようにリアルであろう。アングルはそういったことで特に有名じゃった。
ワシは子供の頃からこの絵が好きで、密かにときめいていたものじゃ。ひひひ。
うん、女子からはいやらしいという非難の声も聞こえるな。
そうした批判も当然じゃ。当時もそうだったらしい。
しかし美しさと猥褻さは対立するものではなく、両立も可能だということも知って欲しい。
さて、今回この絵を紹介するにあたり作者アングルについてちょっと調べてみた。
この「泉」が完成したのは作者アングル76歳の時だったと知って驚いた。当時としても大変な高齢じゃったろう。さらに最晩年の82歳の時には集大成ともいうべき「トルコ風呂」という大作を残しておる。裸の女性の大群じゃぞ。ワシはびっくらこいた。なんとまあ旺盛な創造力なんじゃろうと。ワシなんぞアングルに比べたらまだ若いじゃないか、と勇気をもらったものじゃ。諸君らなんぞ、まだまだ可能性があるってことじゃな。
さてこの「泉」という作品には謎がある。さっきもいったが完成は作者が70代の半ば。ところが制作に着手したのは40代のことらしい。なんと30年以上かかっておるのじゃ。なぜであろうか?依頼された作品にそんなに時間かけるはずはない。これはワシの想像なのじゃが、作者はこの絵を手放したくなかったんじゃなかろうか。だからずっとそばに置いていた。アトリエにいけば、いつもこの絵があった。それはもう愛といっても差し支えあるまい。
この世でいちばん美しいものは「愛」なのかもしれんな。