小説表紙『月光の朱き花は彼岸の下で口付けを』 LEVEL 1
3 years ago
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小説『月光の朱き花は彼岸の下で口付けを』著・蜜柑大福さん
https://estar.jp/novels/25632474
小説表紙描かせて頂きました。
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手を伸ばして指に力を入れて握りしめてもかすりもしない。
そのまま風にさらわれるように花が何処かに飛んでいってしまった。
それがとても寂しくて悲しくて、小さく繋がれた手をぎゅっと握りしめた。
その約束は空に浮かぶ花のように、海に沈む泡のように……消えていった。
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「黄泉の国って知ってるか?夜中の午前0時に鏡の前に立つと死んだ人間が手招きして引きずり込むんだとよ」
「…なんだそれ、都市伝説か?」
「怖くないのかよー」
つまらなさそうに唇を尖らせている水季に微笑む。
水季は怖がりで信じやすいくせに怖い話が好きでよく俺に聞かせてくれる。
俺は実際に見て体験した事以外は信じない性格だから作り話として楽しませてもらっている。
水季の事をバカにしているわけではない、むしろ幽霊がいるなら会いたい。
俺を育ててくれた老夫婦と、両親に……会いたい。
いつもそう願っていても会った事がないからもう諦めている。
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いつもは感じないものを感じる、とても嫌な予感がする…またアイツが暴れているのか。
再びため息を吐き、今日の仕事は終わったから屋敷の中にひまりと一緒に帰る。
ひまりはなにか変だと気付いたようだが、原因が分からずそわそわと周りを見渡して落ち着かない。
このにおいは酷く嫌悪する嫌いなもので、眉を寄せた。
「人間のにおいがする」
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小説お借りしています。