魔夢の間 LEVEL 3
6 months ago
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「師匠、なんの本を見てるんです」
「うむ、わしの豊富な蔵書の中から、おそろしい絵を見ておるのじゃ。まずはこの絵を見よ」
「うわ、なんですこれ。人が食われてますよ」
「これはゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』じゃな。わしはタイトル含めて、子供の頃からこの絵が怖かった」
「他にはどんな絵がありますか」
「これも怖い。ボスの『快楽の園』じゃ」
「うわあ、なんですかこれは。この人達は何してるんですか」
「よくわからんが、地獄のようにも見えるな。次はこれじゃ」
「ああ、この絵なら見たことありますよ『叫び』でしょう」
「さすがに知っておったか。さよう、ムンクの代表作じゃ。あとは、これ『夢魔』という絵じゃ。フュースリーという画家のものじゃ」
「なんか変な生き物が乗っかってますね。この女の人は悪夢にうなされてるんですかね」
「そうかもしれん」
「いやあ、どの絵も迫力ありますね」
「うむ。芸術とは美しいものを描くものとは決まっていない。こういったおそろしい絵にも実に魅力があるんじゃな」
「師匠、僕も最近おそろしい絵に震えました」
「ほう、誰の絵じゃ」
「自分の絵です」
「なんじゃと」
「いや、昔描いた自分の絵ですよ。偶然見つけてしまって、ビックリしました。とにかくデッサンが狂っていて、身体のバランスとか、めちゃくちゃなんですよ」
「ああ、それはわかるな」
「それで、何がおそろしいかって、そのころはそんな変な絵を自分では気に入って、友人とかに見せまくっていたことです。いやあ、今思うと冷や汗ものですよ」
「わしにも覚えがある。これで完成だ、良い作品だと思っても後で見て恥ずかしいこともしょっちゅうじゃ」
「ですよね」
「だから、絵に完成はない。ちょっとでも良いと思えるように日々、更新していくしかないのじゃぞ」