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Latest 島瀬まり/Mari Shimase’s art

召喚の狭間で

鏡面にも万華鏡にも似た世界の狭間。

"彼"は気付くと意識を持っていた。
胴体は毛に覆われ、手足は短く、尾が目先に伸びていた。
「猫」という生物の形態だと思い出すのに数拍の刻を要した。

自分という概念に身体の認知が再開したのは何時ぶりだろう。
何百年、少なく見積もって百年は"眠り"についていたに違いない。
朧げだった意識が徐々に輪郭線を帯びてくる。そうだ、自分にはやるべき使命がある。

極彩色の空間に一際輝きを放つ円環が目の前に現れる。
「その時」が来たのだと"彼"は察した。

理の底と現世を繋ぐ召喚の輪。
魔術の込められた拘束の集合体。
今まで幾度となくこれを見てきたがやはり慣れない。
召喚に失敗し、存在ごと"底"に落とされた同類者たちを多く見てきた。
思わずたじろぎ及び腰になる。

しかし自分に拒否権などは無い。
光を見た瞬間に契約は移行している。
応じなければ相応の報いが待っている。

円環が一層光を放ち、いよいよ覚悟を決める。
今度の御主人様はどんな人だろう。
まばゆい光に包まれ"彼"は目を閉じた。

周囲に渦巻いていた光と風が凪ぎ、身体が下に引っ張られる感覚が鮮明になった。
足の裏にはっきりとした固い「底」がある。
どうやら今回も無事に召喚されたらしい。
何も感じなかったあの空間とは違い、五感が一気に研ぎ澄まされる。
体を撫でる草には見覚えがあった。
嗚呼、懐かしい匂いだ。

昂ぶる心を悟られまいと息を吐いた。
"威厳を保ち、品位を纏え"
頭の中で反芻しながら"彼"は目前の人物を見据え、毅然と言い放った。

「我が名は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
 貴殿の新たなる導きとして召喚された使い魔である。
 理に相応しき行いを実現せよ!」

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1 year ago