なんでも切れる剣
5年前
*/10
タロウとゴン太は、“なんでも切れる剣”を手に入れた。
本当は、「真の勇者にしか抜けない」との伝説の剣なのだが、タロウはいとも簡単に引き抜けた。
結局、「伝説の」という言葉を恐れるあまり、いままで、誰も引き抜こうとはしなかっただけなのだ。
むろん、タロウは、真の勇者でもなんでもない。
「これで、なに切るべ?」と、タロウはゴン太に相談する。
「ヨーカン食いて」と、ゴン太は食べ物のことしか眼中にない。
そんななか、剣を引き抜いたタロウのウワサを聞きつけた村人たちは、ひそかに期待をよせていた。
この村で、悪業を仕切る“悪魔ドラゴン”を、彼が成敗してくれるのだと。
だがタロウは、命をかけて悪魔ドラゴンと戦う気など、ことさらない。
絶対行かないけど、倒したところで「ありがとう」と、お礼を言われるだけ。
タロウは、面倒くさいことが大嫌いなのだ。
そこで、とりあえずなんでも切れるのなら、ためしに硬い岩やダイヤモンドでも切ってみるか、と考えた。
考えて5秒後、それのなにが面白い? と思い、やめた。
ゴン太の言う通り、ヨーカンでも切って食べたほうが、有意義である。
「うーむ」と悩む、小一時間。
突如、伝説の剣がパチパチと火花をあげ、光り出すではないか。
そして、剣はみるみるうちに錆びていく。
どうやら、なんでも切れる剣だけに、“使用期限”を切ってしまったらしい。
めでたし、めでたし。
〈解説〉
なにがめでたいのか、かわからんお話。
絵も文章も“くだらないテイスト”で、ございます。
今日、朝起きたら、頭にこのストーリーが浮かんだのです。