小説挿絵『幸せのありか』
4 years ago
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小説『幸せのありか』著・kotaさん
https://estar.jp/novels/25545440
P120~
挿絵描かせて頂きました。
https://estar.jp/novels/25545440/viewer?page=120
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「ほら。10時までだから。早く行かないと乗れなくなっちゃいますよ!」
伸ばされた左手の薬指に、永遠の証がキラリと光る。
誰にも祝福されなくてもいい。
彼さえ隣で笑ってくれていたら、それでいいと思っていた。
けれど今日、皆に祝福されて幸せな笑顔を浮かべる樹と氷雨を見ていたら、やっぱり羨ましくなった。
愛する人と共に生きていくことを、俺たちも大切な人達に認めてもらいたいと思った。もう二度と、こいつを一人にはしたくないと思った。
観覧車は……、遠くから見るのがいいんです――。
むかし、何かを堪えるような寂しげな目で、海を隔てたこの場所から、遠くの観覧車を眺めていた青年がいた。
いつかこの男の手を引いて、あの光の王国まで連れて行きたいと願っていた。
かつての孤独な青年は、もうどこにもいない。
今も。これからも――。
この10年。
変わることのなかった景色が、水面の向こうで優しく煌めいている。
「観覧車は……、遠くから見るより、やっぱり乗りたいですよね!」
満ち足りた笑顔に手を引かれて――。
あの場所へと歩き始めた。
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(*小説お借りしています。