一葉知秋（いちようちしゅう）

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2 years ago

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『別れて欲しい』
―――—……それは、彼からの突然の呼び出しの理由だった。
別れを告げられる。その予感は、ずっと前……付き合った瞬間からあったことだった。
けれど、それをどこか別の人たちのことだよね？なんて他人事のように見て見ぬふりをし続けていたのは自分で。
それが悪いなんて一つも思ってなかった。
でも。そもそもこの関係が始まったのは、彼からばかりだった。彼から話しかけてくれて、彼から告白してくれて……私から好きだとは言ったことはなかったし、彼から別れを告げられるまで、こんなに好きになっているなんて思いもしなかった。
だって、この距離が心地よかったから。甘えて、どこかで彼に期待していたのだ。
ずっと終わらないものなのだと。このままずっと隣にいられるのだと馬鹿みたいに信じていた。信じさせて欲しかった。
なのに……そんな期待は、夕暮れの秋の中へと消えていった。
いっそのことこの気持ちを伝えれば何か変わったのか。もう一度彼がこちらを向いてくれるのだろうかと願って流した涙に、彼は気付いているだろうか。
今この瞬間だけでいい。だからもう一度こちらを見て欲しい。そんなことを願っていた……――――――。

秋の物寂しさを恋人たちの別れにかけて描きました。
もう一度と願う彼女が、今度は幸せになれる季節が巡ってくることを祈って。

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