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小説挿絵『桃紅柳緑』

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3年前

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小説
『桃紅柳緑──アイツが俺を嫌いな理由と、俺がアイツのことが気になる理由─』著・当麻咲来さん
https://estar.jp/novels/24931169

P231~【第十四章 (14)】
挿絵描かせて頂きました。
https://estar.jp/novels/24931169/viewer?page=231


***

「アキ……好きだ……」
 俺をおかしくさせる、闇を映した漆黒の瞳をまっすぐに見つめる。

 もう何度目かすらも忘れた告白を繰り返す。アキは一瞬困ったように視線を揺らした。

「……慶は、ほんま阿呆やな……」
 そう言いながら、ゆっくりと艶やかな睫毛を揺らしてまばたきをし、睫毛の縁にたまった涙を、ポロリとこぼす。

 そっとその頬の涙に唇を寄せる。苦くてしょっぱいその味は、アキが今まで一杯、流してきた涙の味だ。

「阿呆でもいいよ……」
 俺がそっと覗き込んだアキの瞳は、すごく優しい色合いだった。

「阿呆でも、好きな人の涙ぐらい拭えるし……」
 もう一度、今度は涙で潤む目元にくちづける。

「阿呆でも、アキが好きだし。阿呆でも、アキのこと護ってやりたいし……」
 囁きながら、その男子にしては紅い艶めいた唇に視線を落す。一瞬ためらってアキの瞳を見つめる。ふっと艶やかに、でもどこか優しげに笑って……アキが瞳を伏せる。

「まあ、阿呆でも……」
 アキが瞳を伏せたまま、呆れたように囁く言葉が、艶めいた唇の中で小さく吐息としてもれた。

「俺も……」
 小さく唇に柔らかい笑みが浮かぶ。

「……慶が……」
 言葉にならず、唇が形だけで言葉を紡ぐ。我慢の効かない俺は次の瞬間、触れ合った唇でそれを感じる。微かに動く唇は……。

「……好きや……」
 って囁く形を……していると、
 ……俺は、そう思った。



****
(小説お借りしています。


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