ヨシダヨシタロウの想い出 LEVEL 1
3 days ago
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皆様、こんにちは。こんばんは。おはようございます。多分今年最後の1枚になると思います。皆様には、たくさんお世話になりました。来年もよろしくお願いします。
以下ショートストーリーです。
=ヨシダヨシタロウの想い出=
午前六時。俺は今、散歩をしている。
俺は先月60になった。
俺は先月定年退職をした。雇用延長はしなかった。
俺には娘がいた。
朝、娘を保育園に連れて行くのが俺の役割だった。
俺は仕事が終わるのがいつも遅かった。
朝の保育園までの道のりは、俺と娘との大切な時間だったんだ。
数百メートル先にある保育園までの道のりは、必ず娘は抱っこをせがんだ。
なぁ、ヨシコ。お友達はできたかい。
うん、ひろくん、りょうくん、とおるくん、かいとくん。
おいおい、男の子ばっかりじゃないか。
うん、そうだよ。あと、ひろくんとケッコンするんだ。
そうか結婚か、じゃあお父さんとは、一緒にいられなくなっちゃうな。
そうなの?なんで?
結婚相手と新しいお家で暮らすんだ。だからお父さんやお母さんとはバイバイになっちゃう。お家が遠いとお父さん寂しいなぁ。
ふーん、そうなんだ。じゃあやめる。
ひろ君には謝らないといけないなぁ。
いいよ。ひろくん、たくさんケッコンするっていってるもん。
ヨシコとおくにいかない。おとおさんと、おかあさんと、おにいちゃんといる。
大人になるまででいいから、お父さんのそばにいてくれよ。
わかった。
約束だよ。
うん、やくそく。
約束が、守られる事はなかった。
娘は遠くへ行った。
すごく、すごく遠くへ。
俺は今、散歩をしている。
あの頃着ていた革ジャンを羽織って。
娘が革ジャンに付けた、擦り傷をさすりながら。
おわり