翠眼魔女は運送屋
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9 years ago
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夕刻を迎えたどこかの街広場に一つの影があった。
影の正体は一人の少女だった。
彼女は古びた箒にまたがると、黒のとんがり帽子の鍔を指で整え、視界を広げた。
するとどこからともなく黒猫が現れ、一鳴きすると、その気怠げな声とは裏腹に、俊敏な動きで箒の先端に飛び乗った。
日は沈み、世界が橙色に染まる中、あたりの風が静かに騒ぎ始めた。
『さーて、今日もがっぽり稼ぎますか!』
そう言い、彼女はニマリと笑うと、柄を握る手に力を込めた。
次の瞬間、地面を蹴り上げ、吸い上げられるように黒い影が宙に舞った。
魔女の運送屋、開業時刻である。
さて、今宵の仕事はどうなることやら。