小説挿絵『ピンクネオン街 無料案内人』
3 years ago
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小説『ピンクネオン街 無料案内人』著・もちねこ丸さん
https://fujossy.jp/books/21951
2人目_「虚言蜥蜴」の騙し方⑭
https://fujossy.jp/books/21951/stories/447901
挿絵描かせて頂きました。
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「『俺はこの街で愛されない』って言葉、取り消してください」
広瀬は珍しく、苛立ったように拳を握りしめていた。
「俺は、貴方のことを、本気で、愛してます」
視界の隅に、目を丸くしてこちらを見る野火山が映った。ご丁寧に、読みかけのグラビアを置いて、興味津々の様子でこちらを見物している。
いい気なもんだ。
こっちは、返す言葉が見つからず、ただ間抜けに、広瀬の顔を眺めるしかない。
「俺はまだ、野火山さんの言う、悪い恋とか、いい恋とか、全然分かりません。ただ、俺は、伽藍さんのことが、好きで、大好きで、貴方のためなら、何だってやれます」
そう言われて、ようやく、皮肉めいた言葉が溢れた。
「……盲目の時点でろくな恋じゃねぇよ」
「でも俺は今、この恋を、後悔してません」
何を言っても、無駄だと悟った。
俺を抱いた時の、広瀬を思い出す。
あの日も、こんなふうに据わった目で、広瀬は、俺を見据えていた。
「俺の行く末がどうなっても、このまま貴方が、俺を振り向かなくても、俺は……、俺は、貴方だけを……」
愛しています、と、言うのが、分かった。
だからとっさに、その口を手で塞いだ。
広瀬はモゴモゴとわめいて、それから、しょぼんと耳と尻尾を垂れさせた。
広瀬がおとなしくなったのを確認して、ゆっくりと、口から手を離す。
「……化け物からの恋は、受け取れませんか」
***
小説お借りしています。