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略奪騎士の断末魔

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6 years ago

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昔々、何でも一つ願いを叶える宝を守る大柄な騎士がいた。
騎士はどうして自分が宝を守っているのか、そして自分の名前さえ分からなかった。
分かるのは満たされない心の渇きと宝を狙うものを千人殺せば心の渇きが消えるという事だった
騎士は宝に心の渇きを消してくれと願ったが何故か願いは叶えられなかった
だから騎士は宝を狙うものの命を奪い続けた
残酷に命を奪う騎士の姿を人々は【略奪騎士】と呼ぶようになった。騎士自身も命を奪うことに酔っていた、しかし心のどこかで八つ当たりにも感じていた。
そして長い年月で何人もの何人もの命を奪い、とうとう千人目の挑戦者が騎士の前に現れる
今までの挑戦者は腕の立つ傭兵団、盗賊団、小国の兵隊と強者ぞろいだったが最後の挑戦者は実にひ弱そうな少年だった。
「お…お前を倒して、か、母さんの病気を治すんだ‼」
震える両手で剣を構える少年、騎士にはどうでもよい話に思えた。
奪うには余りにもちっぽけな命、しかしこれで心の渇きも消えるだろう、あっけなく少年に止めを刺す瞬間だった。
騎士の剣が止まった、目の前に少年を庇い抱きかかえる影が見える
病気の母親であった、病に侵されたその体を引きづってまで我が子を連れ戻しに来たのだろう…

ふいに騎士は思い出す、それはまだ自分が略奪騎士ではなかった頃の記憶
とある小国の王の子供、双子の弟として産まれた彼は冷遇されていた。
母親の寵愛は全て兄に注がれ彼はいつも孤独だった。心が乾いて仕方なかった。
小国が敵国に責められた夜、母親は兄だけを連れて逃げ彼は置き去りにされた。
そう、彼は小国にまつわる宝によって略奪騎士となり現在に至る。一つの願いを生き残るために使ったため愛されることはなくなったのだ。
彼は愛を奪えなかったただの孤独な少年だ、略奪騎士は最後の挑戦者に宝を渡すと瓦礫のように崩れ落ちた。その時の断末魔は世界の果てまで届いたという。

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