ある壁画の逸話
8
103
Comments
8 years ago
*/10
『 称えし王がこの地を統べし頃、奇異なる民現る。
傭兵に連れられし彼の者の容姿、我々と極めて異なり。
青がかりし髪に黄の眼、光に当たらんば極彩色に輝きて、見ゆ者全て目を細めたり。
齢十五幾ばくか程の面に反し、たたずまい真に大人しやかなり。
さても彼の者、珍妙なることを云ふ。
「 我、行く先から参りて候。人王に云ふべき事ありて現る。
此の頃、うからにて死人出づなむ。いづれも仇国による謀ごとなり。
家臣ともども心置かれたし。」
皆人初めきどからず、彼の者嘲られし。
然れどややありて、うからにて死人出づきて驚かれぬる。
人が云ふ事には彼の者、音出づ絵巻の薄き板持たり。
その他我々かつて覚えゆ品あまた持ちにけり。
ある家臣の云ふことなれば、彼の者、時の人ならず心置くべしと。
いつしか彼の者、消え失せぬ 』