小説挿絵『勇者だった俺は今世こそ平凡な人生を歩む!』
4 years ago
*/10
小説『勇者だった俺は今世こそ平凡な人生を歩む!』著・りおさん
https://estar.jp/novels/23984425
P823~【勇者は捕獲】(28)
挿絵描かせて頂きました。
https://estar.jp/novels/23984425/viewer?page=823
*****
――完全に油断していたし、そもそも疑ってもいなかった。
コーヒーを飲み切った俺は、脱力感と急速な眠気に襲われた。
(なんだ…これ…?)
紙製のカップが手から滑り落ち、軽い音をたてて床の上を転がる。
しかし、落としたカップを拾おうにも、もう俺の身体はソファーから立ち上がることが出来なくなっていた。
まさかと思いつつ向かいの席の兄を見ると、無機的なレンズ越しにこちらを観察する冷静な双眸と目が合い、――その眼差しを見て確信する。
この体の変調は、兄の仕業であると。
「てめ…クソあに…き…」
ブラコンが聞いて呆れる。
コーヒーになんか盛りやがったな…!?
「無茶な真似をしたらお仕置きだよって言ったよね」
正しいのは自分だと言いたげな口調だった。当然の顛末だと揺らぎなくこちらを見下ろす瞳がそう語っていた。
頭を振り、額に手をあてがってこめかみを指で押さえても眠気は失せず、意識よりも先に身体の方が負けてソファーの上を滑りおちようとする。
それを片腕で必死で支え、かすんできた目で平然と端座する兄を睨んだ。
「やりすぎ、だろーが…っ」
いくらなんでも本気で薬を盛るとか、うちの兄貴はマジ頭おかしい。
「おとー…とに…なに…してん……だ…」
――最後まで言い切れたかどうかわからない。
すでに焦点が定まらないほどに視界が歪んでいた。
****
小説お借りしています。