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提灯祭の夜に LEVEL 1

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4日前

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 今夜は城址の公園で、夏祭りがある。地元の人は「提灯祭」と呼んでいる。人口十万人ほどの山間にある地方都市だが、江戸時代から残る立派な城郭がある。その頃から祭では和紙で作った無数の提灯が街を照らす。葵も小学生の時に地元特産の和紙で作った思い出がある。なんでも当時のお殿様が、派手好き遊び好き祭好きだったそうで、その時からの伝統のようだ。歴史に興味がない葵はそのお殿様の名前すら覚えていないが、お祭りは毎年楽しみにしていた。今年は特に。
「あんたは、胸が小さくてヒョロヒョロしてるから、浴衣がよう似合うわ」
着付けをしてくれた葵の母が変なことをいった。
「よし。これでバッチリ。張り切って好きな男の子に見せておいで!」などと葵をからかう。
 でも母のいうこと、外れてはいない。今年浴衣を着たかったのは見て欲しい人がいるからだ。あいにく同級生の「男の子」ではないが。 
 そういえば、そのお殿様、ずいぶんと女好きでもあったそうだ。案外自分が夜遊びするために提灯や灯籠を設置させたのかもしれない。でも、夕方街に出て葵は思った。昔は夜真っ暗でとても夜に出歩けなかったろう。たくさんの灯りで領民も助かったのだろう。きっと心まで明るくなったに違いない。じゃあやっぱりいいお殿様だったのかな?とも思った。
 葵が会いたい相手はお殿様ほどではないが、なかなか会える可能性は低い。でもきっとお祭りには来る。そうしたら、ちゃんとあいさつしよう。私も高校生になりました。子供の頃はお世話になりました、と。そしてお世辞でもいいからキレイだといって欲しい。そう思った。
 

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