小説『幸せのありか』 LEVEL 3
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4 years ago
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小説『幸せのありか』著・kotaさん
https://estar.jp/novels/25545440
小説表紙描かせて頂きました。
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叶わないと知ってたら、我が儘を言ってでも、あのとき家族みんなで観覧車に乗ったのに――。
口を噤んだ津曲から、そんな心の声が聞こえてくる。
遠くの光の輪に諦めの眼差しを向ける幼い頃の津曲が、すぐそこに見えるような気がした。
「何故でしょうね。あの頃と違って、今は遊園地(あっち)に行くお金だってあるのに。
自分でもよくわかりませんけど……、何故かいつもここに来てしまうんです」
何かを堪えるように薄く笑ったその横顔に、最近どこかで見た笑顔が重なる。
今はまだ、大丈夫だよ――。
少年課に補導され、アパートまで送り届けたときにそう言って車から降りた幸(さち)の笑顔だった。
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小説お借りしています。