トンネル温泉 LEVEL 3
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コメント
2年前
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「お客さん、どっから入ったんですか?まだ営業時間外ですよ」
少女の声に僕は目が覚めた。
トンネルから出るあたりで気を失っていたらしい。
ここは脱衣場のようだ。当然僕は全裸でびしょ濡れだったが
少女は恥ずかしがる様子もなく、ただ困っている。
仕事柄、男性の裸にも慣れているのだろうか?
「あ、ごめんなさい。えっと確か君は…英利子ちゃん」
さっき聞いたばかりの、少女の名前を僕は呼んだ。
自分の声とは思えないほどしわがれていた。
ほんの一瞬、気を失っていただけなのに。
一瞬?
本当にそうだろうか。
もしかすると、何時間も何日もたっていたのかもしれない。
ひょっとすると、何年、何十年も。
「お客さん、なんで名前知ってるんです?知り合いですか」
少女が厳しい眼差しで僕を見つめた。
ちょうど、さっき初めて会った時のよう。
だがそこには何かが違うという違和感があった。
「英利子は、母の名です。私は娘です」
少女のセリフは本来なら意味不明なものだ。
さっきの女の子にこんな子供がいるはずがない。
だが僕には全身に電流が流れたように直感できた。
…ひょっとすると、何年、何十年も。
僕はまた気が遠くなった。
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