小説表紙『森のアルファさん』
4 years ago
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小説『森のアルファさん』著・ショコリータさん
https://estar.jp/novels/25195832
小説表紙描かせて頂きました。
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熊谷の困ったときの癖を見て麒麟が眉を寄せたのと同時に、熊谷は一度天井を仰ぎ見てから重い口を開いた。
「……強いて言うなら、『贖罪』……だな」
「え……?」
思いがけない返答に、麒麟は熊谷の顔を見詰める。
「命があるモンを作ることで、俺の心のどっかに、許されたいって気持ちがあるんだろうな」
……『贖罪』? それは、何に対して?
聞き返したかったけれど、過去の話になると熊谷は何故かいつも、何かを思い出すようにもの悲しい顔になる。まるで、ここには居ない誰かを探すようにジッと宙を見詰める熊谷に、麒麟はどうしてもそれ以上踏み込むことが出来なかった。……踏み込んではいけない気がした。
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麒麟がここに来るまで、熊谷は独りの時間と癒えない傷を持て余していたんだろうかと思うと、「独りじゃないよ」と抱き締めたくなる。
けれど、麒麟が熊谷と過ごした時間なんて、まだまだ本当にちっぽけだ。
「熊谷さんがこれまで作ったガラス細工の数は、熊谷さんが香芝さんを想っていた数。……だとしたら、俺はちょっと、香芝さんが羨ましい」
思わず口をついて出た本音に、麒麟はハッとして口を押えた。
「……ゴメン、不謹慎だった……」
文字通り溢れかえるほどの想いを今も尚受け続けている香芝が素直に羨ましくて、こんな話の後でも思わず嫉妬を覚えてしまう自分の狭量さが嫌になる。けれど、熊谷は少し黙り込んだ後、髪を撫でていた手を滑り落として麒麟の肩をそっと抱き寄せた。
「気にするな。お前の言葉には、時々俺もハッとさせられる。……お前は、俺なんかよりずっと大人だよ」
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小説お借りしています。