【BB49-12】盤上の夜
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4년전
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【「空の果ては、冷たく、寂しいよ」由宇はゆっくりと一語一語を選びながらわたしの問いに応えた。「日々の暮らしを生きる人たちは、そんなものはわたしの幻想だと言うでしょう。それはわたしの妄想であって、わたしのような存在は、まるで海抜ゼロメートル付近のアスファルト上で、登山具に身を包む道化なのだと。彼らの言うことも、わからないでもない。でもね」
由宇の面持ちが明るく晴れやかであることにわたしは気づいていた。これほど確信を持った表情というものをわたしは久しく見ていなかった。このとき初めてわたしは彼女が必ずしも不幸ではないのだと気づかされた。そんな心情を知ってか知らずか由宇はつづけた。
「それでも、二人の棋士は、氷壁で出会うんだよ」】