小説表紙『微熱』
4 years ago
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小説『微熱』著・葉月めいこさん
https://estar.jp/novels/25023138
小説表紙描かせて頂きました。
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「俺、もしもの時は先生の傍がいい」
「……縁起でもないこと言うんじゃないよ」
図太そうな見かけに寄らず、身体がひどく弱い穂村は絶対安静ではないが、本当は学校なんかに来ている場合じゃない。それでも一日半分だけ、勉強を名目に学校へ登校してくる。
特別教室はいつも一人で、ほかの生徒と交わることがない。迂闊な行動で穂村の体調が崩れてしまうからだ。でも具合が悪くなって保健室に来る穂村はなんだか満足げな顔をする。
「もしもなんてこと私が見逃すと思うか」
「ううん、思わない。でもさ、先生の顔を見たら俺すげぇ元気になんの」
ひどく嬉しそうな顔で笑う穂村を見ていると心が軽くなる気がする。いつの間にかその笑顔から目が離せなくなって、彼を見ていると不思議と安堵してしまう。
「気持ちが元気でも、身体が追いつかないことはあるんだよ。それで熱を出してたら意味ないじゃないか」
「それでも先生がいてくれるだけで俺は幸せなんだよ」
ニコニコと無防備で言葉のままに幸せそうな顔で笑われると、強く言えなくなる。いままでこんな風に笑っていた人間は、自分の傍にいただろうか。
「おかしな奴」
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(*小説お借りしています。