小説表紙『想思華~悠久の唄~』 LEVEL 4
4 years ago
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小説『想思華~悠久の唄~』著・天月天兎さん
https://estar.jp/novels/19720530
小説表紙描かせて頂きました。
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愛しいひと。
生まれ変わって、
きっと貴方の元へ―――…
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「……あ、の…」
僕を見つめる瞳は、まるで彼岸花みたいに赤い。その瞳が、ただただ僕を見詰めて離さなくて―――。
僕も目が離せない。
何だろう…、何か言いたいのに、言葉が出ない。目も離せない。動く事も、出来ない。
心臓がドキドキして、胸のずっと奥がキュッとなって、頭の中が熱い。ぼうっとなって、何も考えられない。
この人は、いったい誰―――?
ふと気付くと、自分の頬が冷たい。
閉じる事さえ忘れた僕の目からは、何故かポロポロと涙が溢れていて―――…
慌てて拭おうとして、僕のものでは無い手が伸びる。
「………………っ」
息を飲んだ。
差し出されたその人の手は、ほんの少し冷たくて……でも、優しく優しく涙を拭いてくれた。
知りたい…!
強烈にそう思った。
この人の事を知りたい。月の化身の様な人。彼岸花の様に赤い瞳を持つ人。冷たいけれど優しい手の持ち主―――。
涙が止まらない。
その人が、何度拭いてくれても次々と溢れてくる。
貴方は…誰?
そう問い掛けようとして、急な頭痛が僕を襲った。耳鳴りが酷くなって、胸の締め付けが強くなって。
―――唐突に、僕の意識はプツリと途切れた。
意識を完全に手放す瞬間、その人の唇が何かを囁いた。
何て、言ったの…?
名前を呼ばれた気がしたけれど、それは僕の名ではなかった。
誰を呼んだのだろう。その瞳は真っ直ぐに僕を見ているのに。その唇が紡いだ名前は、いったい誰のものだったのだろう。
意識を手放した僕に、それを確認する術は無かったけれど―――…
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*小説お借りしています。